10月の新刊はど真ん中の高速スライダー

いろんな意味ですごく期待している。
小島正樹『十三回忌』。
約800枚の豪快な堂々たる本格推理小説だ。
数年前に南雲堂から『天に還る舟』を島田荘司さんと共著で刊行してるけど、
今回が単著で実質的なデビュー作。


ある素封家一族で起こった連続殺人の物語。
そこで当主の妻が不審死を遂げ、これを警察は自殺と判定してしまう。
それが発端になったらしい。
当主の妻の一周忌には「円錐形のモニュメントに真上から突き刺さった少女」、
三回忌には「木に括りつけられさらに首を切られた少女」、
七回忌には……と続いていく。そして十三回忌にはいったいなにが起こるのか。

これ以外にもいろんな謎が絡み合ってくるんだけど(嵐の晩になぜか開け放たれていた窓の問題とか唇だけ切り取られていた問題とかね)、バランスがとれているので胃もたれとか起こしたりもしない。


……というだけの物語だったら(それだけでも面白いんだけど)、「他にもこういうのあるよね」で終わっちゃうかもしれない。

そうじゃなかったんだよね。
この作品のキモはそこじゃない。

じっさい僕も初読時に「あれっ?」と思いながらもまんまと作者の術中にはまってしまったし。
いやあ、嬉しいやら恥ずかしいやらだ。


ほんと、驚いたね。今年一番のど真ん中の高速スライダー(by伊藤智)といってみたい。