新刊・倉阪鬼一郎『留美のために』

メンバーの相次ぐ「自殺」に伴って解散を決めた大学のミステリサークル。
その最後の集まりはサークルがたまり場にしていた店でとなった。
自殺者の遺稿「紅玉の祈り」の朗読会を催し、死者を悼むという趣向なのだが、
そこには驚くようなかたちで「自殺の真相」がはっきりと記されているという。
残されたメンバーはひとり、またひとりと「真相」に気づくのだが……。
奇才が放つ、企みに満ちた青春ミステリー。

倉阪さんの作品にはいろんな方向や味わいがあって、『田舎の事件』のような脱力系ユーモア(でも黒い)から『四重奏』のような大仕掛け、最近だと『四神金赤館銀青館不可能殺人』がその両作のあわいのようなふうであったり。難渋な幻想作品があったり読者を遠くへ置き去りにしてしまいそうな物語があったりと実に多彩だ。
んで、今回の『留美のために』は今月の中旬刊行予定。作品の方向で言うと……うーん、いくつか浮かぶんだけど意外にくくりが難しいかもだ。難渋さはない。仕掛けはある。大仕掛けだ。それもひとつじゃない。もってまわった物語では、ないと思う。
とにかくどんな仕掛けかは、読んでのお楽しみ。