西澤保彦『収穫祭』、倉阪鬼一郎『四神金赤館銀青館不可能殺人』

意外にするするとのめり込みながらほとんど一気に読めてしまいました。

収穫祭

収穫祭

心の闇というかトラウマというか連鎖というか、いわゆる本格ミステリとは別の方向なんだと思うけど、「ああ、西澤さんの渾身の一球なんだ」という印象を強くした。なんとなく『猟死の果て』とのペアリングを思ったのだが。
サスペンスとしては、嵐で孤立した寒村で起こった第1部「ほとんど皆殺し事件」は圧巻で、もちろん自分に当てはめるとぜんぜん理解できない行動もとる作中人物たちだけど、こういう地に足の付いた惨劇は、んとに怖い。
それから第2部以降を読み進めていくと、作中人物とともにどんどん奈落へ落とされていくような気になってくる。後ろ向きの欲望の際だった、西澤さんのなかでも暗黒度ナンバー1ではないか。後味はもちろんよくないが、ものすごく面白かったよ。

んで続けて倉阪鬼一郎『四神金赤館銀青館不可能殺人』を一気読み。

四神金赤館銀青館不可能殺人 (講談社ノベルス)

四神金赤館銀青館不可能殺人 (講談社ノベルス)

いんやぁ、まいりました(笑)。こういうのってなんだか愛しく思えますよ。あくまでボケ方向に突出したユーモアでもあって。傑作『田舎の事件』を彷彿とさせる、といったらはっきり誤解を生むだろうけど。
こっちも嵐のなかで「青銀館」というところで殺人事件が起こり、ちょうど時を同じくして湾をはさんでむかいにある「赤金館」でも殺人事件が。しかも……。というこれ以上書けない話なんだけど、ぼくはけっこう騙されました。ていうのは「建物図面」をなんだかすごく深読みをしてしまって(笑)。

さて、梅雨も明けてカブクワ・シーズンも本番。今年の楽しみは、自宅から徒歩2分のところの1本のヤナギ。良い具合に樹液が出ていて、ここにクワを中心によく集まってくる。昨夜も、ちらっと見にいったんだけど、

こんなのや

こんなのがそこかしこ。
でも、この木からは採らないことに決めている。眺めて喜ぶだけ。
子供の頃はヤナギにクワカブが集まるなんて知らなかったよ。