三津田信三『禍家』

三津田さんの作品の中では、たしかに解説で千街さんが書いているように入りやすい、のかもしれない。

禍家 (光文社文庫)

禍家 (光文社文庫)

だが、逆に「出にくい」のだ。この物語の世界から。
三津田さんのホラーの怖さは、怖いものを怖く見せるというだけでなく、その理屈にあるんだと思う。
(物語の世界律の中で)理にかなってしまうから怖さが沁みるのだ。
いわゆる本格ミステリと違うから「現実」には着地しないんだけど、「あっちの世界」では着地してしまっている。
怪異自体も「あっちの理屈」で筋が通ってしまっている。これはやばい。物語に入り込んでしまうと、なんか怖くて仕方ない。出られない。
しっかし三津田さんの描く「森」って、なんであんなに禍々しいんだろう。
というのは、次に鳥飼さんの『異界』を読み始めたからなんだけど。
異界

異界

これは冒頭から森の中の描写で、その「怖さ」みたいなものも描いているんだけど、
こっちは禍々しいのではなくて宮崎駿のような。南方熊楠だし。ナウシカだし。という感じだ。
でもこっちも読み進めるのが楽しみでならないよ。
熊楠って写真とかよりも水木しげるの漫画が強烈すぎて困るんだ。あと山口雅也『奇偶』のあの場面とか。