海賊物語

来月、『カリブの大海賊 バーソロミュー・ロバーツ』という本を刊行します。「空前の海賊ブーム」だから、というのはむしろ動機の後ろの方で、それよりも、18世紀のほんとに短い期間、怒濤のようにカリブ海を席捲した「最後の大海賊」について、これはなんとしても本にしたいと。
イギリスのごく普通の船乗りがある日海賊船に捕らわれて、「生きていたかったらお前も海賊になりな」。
それでいやいやながら海賊になったロバーツなんだけど、その確かな航海技術にほかの海賊たちの人望も上がり、やがて海賊船長に。
トラバーユだからというわけじゃないけど、ロバーツの手法はほかの海賊には真似の出来ないものだった。ちっぽけな商船を襲撃するよりも、もっと実入りのいい「港」ごとやってしまえ! とか。自船の何倍もありそうな艦船に戦いを挑むとか。かなり破格。
それなのに紳士でお洒落、部下に厳しい掟を守らせるが(ギャンブル禁止とか)そのぶん富の公正な分配に心を砕くといった一面もある。
魅力的な男なのだ。たとえて言えば「海のチェ・ゲバラ」。政治的なところはぜんぜん違うんだろうけれど、行動からあふれ出してくる独特のロマンティシズムに、似た匂いを感じてしまう。
バーソロミュー・ロバーツの残した言葉にこんなものがある。

「まっとうな仕事じゃ、食い物はとぼしく、給料は低く、仕事はきつい。
こっちじゃ、飽きるほど食って、楽しく、気楽で、自由で、力がある。
それに、こっちじゃ、とりっぱぐれがない。
運にまかせてやって失敗したって、せいぜい、しかめっ面されるだけ。
そう、楽しく短い人生、それがおれの主義だ。
手綱つけられて生きるやつなんぞ、くそっくらえだ」


チェ・ゲバラ伝

チェ・ゲバラ伝