黒川博行『絵が殺した』

黒川博行さんの未読もあと少し。

春になって筍が地面を突き破って顔を出す。顔を出したのは筍だけじゃなかった。筍の上に埋められていた死体もついでに持ち上げられて、ほっこりと顔を出した。
そんなふうに(もちろん文章とかはぜんぜん違う)物語ははじまる。死体はずいぶん前に失踪していた日本画家であることが判明、どうやら背後には「贋作」をめぐるあれやこれやがあったらしい。
という話なんだけど、『文福茶釜』という美術裏側傑作短編集もある黒川さんのこと、癖のあるひとびとの癖のある行動で物語をあんまり複雑にはしない程度に混乱させていくのだ。なかでも京都の美術ブローカーがなかなかの味わい。……と思ったらもう黒川さんの思う壺。
そして、この物語の最後の台詞の味わい。ベスト・ラストシーンのひとつに入るね。おれの。


それから三津田信三『首無の如き祟るもの』が地方の書店を中心に品切れを起こしているところが結構あるそうで、すんません。
出来るだけ早く補充できるようにがんばってますので。たとえばこちらからもよろしく。

首無の如き祟るもの (ミステリー・リーグ)

首無の如き祟るもの (ミステリー・リーグ)