『ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!』

満を持してという感じもする第36回メフィスト賞受賞作。オビは島田荘司さんの推薦文で、
「誰もが気づかなかった方法。このジャンルの、文句なくナンバーワン。」

ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ ! (講談社ノベルス)

ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ ! (講談社ノベルス)

「あなたが犯人」という設定のミステリはこれまでにいくつかすでに出ていて、ぼくが覚えているものでは同じ講談社ノベルスのにもあったね、15年くらい前かな? そのときは正直脱力したのを覚えている。ネタバレになるので詳しくは書けないけど設定にどこか無理があったような。
そんなわけで『ウルチモ・トルッコ』も、じつはものすごく警戒して読み始めたのだが……。
いやあ、文章とかプロットとか、ほんとに新人とは思えない安定感があって、あれよあれよと警戒心は霧散して「世界」に入り込んでしまったよ。うまいね、どうも。とくに、超心理学の研究室にまつわる場面などは文句なく面白い。真面目な描写なんだけどどことなくユーモアも交じる気の利かせ方で、超心理の先生もなんだかフェル博士のよう(ってよく考えるとぜんぜん違うんだが)。
んで肝心の「あなたが犯人!」のところなんだけど、おおっ、たしかにその方法でいけばオレが「犯人」じゃん、こまかくは書けないが。なるほどねー。あれがすべてそのために用意されていたとは……。んでそれによってあれがこうなって……。
と妙に感心してしまうのだったよ。
次作はやっぱり超心理学のフェル博士(だから違うって)が主人公になるのかな?

三津田信三さんの新刊『首無の如き祟るもの』。まだ店頭に並んで数日なんだけど、ネットでは早くも話題を集めているよう。よかった。年間ベストクラスを信じて刊行したこの作品ですから、初動にひと安心。

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