内田幹樹さんのお参り

先日の朝日新聞天声人語」に航空機の安全と絡めて内田幹樹さんの『機長からアナウンス』が紹介されていた。もう亡くなって1年になる。
内田さんが「読んでほしい」と作品を原書房へ送り、最初の10ページくらいでびっくりして会いに行ったことはまだ覚えている。
たしか某駅の改札口で初対面できりっと握手。おおっ、これが国際線の現役機長の社交術かっ、と印象に残った。
それから半年くらいで刊行になったのがデビュー作『パイロット・イン・コマンド』

パイロット・イン・コマンド (Pilot in command)

パイロット・イン・コマンド (Pilot in command)

国内作家で、こうした航空サスペンスを書ける人は他にいないでしょう。とくにコクピット内の「実際にあり得る」設定と喧噪と操作や、CAさんの人間関係や態度などなど、ほんとうに手に汗握る物語になった。
それから第2作『機体消失』を刊行して、
機体消失 (Pilot in command (2))

機体消失 (Pilot in command (2))

ここでちょっとひと息、目先を変えて内田さんに言ってみた。
「内田さん、いつも飲み屋で話してくれる航空関連のあれやこれやをエッセイ集にしてまとめてみませんか?」
「えっ、こんな飲み屋の与太話を?」
そうふうにして話しながら骨組みを作って仕上げていったのがベストセラーになった『機長からアナウンス』だった。
機長からアナウンス

機長からアナウンス

それから『操縦不能』が刊行される。
操縦不能

操縦不能

そして去年、内田さんの最後の作品となった『拒絶空港』。

拒絶空港

拒絶空港

もちろんそのときは内田さんの病状など知るよしもなく、ちょっとお疲れですね、でも近いうちに、中華街で美味しいもの食べに行きましょう、くらいでお別れした。それからしばらくして近くの中華料理屋さんで会食したのがお目にかかった最後になる。

うーん、勝手にしんみりしちゃったが、ほんとうにつくづく惜しい。「楽しい大人」内田幹樹さんに、あらためて、黙祷。