『ベヴァリー・クラブ』並び始めた

ピーター・アントニイ『ベヴァリー・クラブ』(横山啓明訳)
書店さんに並び始めたようです。
世間的には『衣装戸棚の女』の著者というより『アマデウス』や『スルース』の劇作者、あるいはクリスティの映画『ナイル殺人事件』の脚本というほうが良いのかもしれないけど、そういう彼ら(アンソニーピーター・シェーファー)のことだから、もちろん一筋縄じゃいかない。

「デレク・リヴィングストン卿殺人事件」の犯人とされ(物的証拠がたっぷりあった)、しかし裁判でついに無罪となった男が「ついに犯人がわかった」と書き残した直後に事故死してしまう。
犯罪愛好家集団ベヴァリー・クラブの面々は事件の真相の解明を探偵ヴェリティに依頼した。ヴェリティは事件のあった田舎町へ赴き、真相解明に乗り出すが、やがて関係者の誰もが容疑者であることに気づく。移動された死体の謎、変化していく証言、リヴィングストンの周囲の怪しげな人々、多すぎる証拠……。
ヴェリティはやがてその背後の見え隠れする「大きな真相」に手をのばすのだが……。

ていう物語なんだけど、これ以上は書けないけど、ある意味で英国ミステリの王道的なシチュエーションではある。田舎の豪邸で地元の名士が殺される。遺産とかなんかかんや(笑)で、容疑者が半ダースくらい出てきて、屋敷のメイドは盗み聞きが趣味で……ていくらでも出てくる。そうそう、探偵がちょっとイヤミな性格なのも王道だ。
でも物語のさばきかた、というか料理のもっていきかたが面白い。どたばたせずにふっと視線をずらしていくような洒脱な感じもあって、味わって読むには最適だと思いますですよ。