島田荘司選 第1回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞

通称「福ミス」の受賞作発表の記者会見とイヴェントに行ってました。

第1回受賞の松本寛大さん『玻璃(はり)の家』。この作品は人の顔を認識できない「相貌失認」という症状を持つ少年が目撃した殺人事件をめぐる物語で、彼と日本人心理学者によっていかにして犯人を特定していくか、が読みどころ。これにいっさい鏡が置かれていない屋敷の意味、その屋敷をめぐる過去の悲惨で不可解な出来事が絡み合っていくのだ。読み応えもじゅうぶん、新人離れした書きっぷりに驚いた。記者会見でも触れられていたけれど、島田荘司さんが「この賞に応募してくれてほんとうにありがたかった」と。

さらに今回は当初は予定されていなかった「優秀作」というのも出した。
水生大海さん『罪人いずくにか』。このまま落選ということでお仕舞いにしてしまうには惜しい、なんとか評価の意思を伝えたい、そういうような位置づけになるだろうか。この作品は『玻璃の家』とある意味正反対の物語。ドラマのロケ中に女優の隠していた過去が巧妙に暴かれていく物語と、その過去の物語が交互に語られ、両者が結びついたときに真相が浮かび上がるといった構成で、こう書いちゃうとなんだか定型じみているんだけど、テンポの良さや過去の女子高校生たちの青春小説的な描写にも惹かれる。

それにしても全93編から選び上げていくのは大変だった。この夏はずっと読んでた気がするよ。選には洩れちゃったけど本当に「惜しい」という作品もあったし。連作形式の作品があって設定や仕掛け方がものすごく上手だったんだけど、連作の「外枠」が弱くて印象としては短編集。いちおう長編の公募だから落とさざると得なかったりとか。また読みたいなあ。次も応募してきてほしいなあと思いましたよ。

詳細はこちら公式サイトでも。
http://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/bungakukan/fukumys/