五十嵐貴久『交渉人』

五十嵐貴久さんの作品を読むのはじつは初めて。すんません。書店で新刊文庫本コーナーをうろうろしながら面白そうな作品を物色していたら、
「この本屋さんイチオシ」といったようなコピーがはじめからオビに印刷されていて、「それって、アリなんだ……」とちょっと驚いて手に取ったのがこれだった。
「交渉人」といえばサミュエル・L・ジャクソンの同名の傑作ミステリ映画のタイトルでもあるし、近年では『交渉人 真下正義』もスピード感があって面白かった。そういうところへもってきてこの『交渉人』である。

交渉人 (幻冬舎文庫)

交渉人 (幻冬舎文庫)

基本線は強盗をやらかして逃げて深夜の病院に立てこもった犯人グループと警視庁のエリート交渉人とのやりとりなんだけど、このあたりの描写はとてもしっかり読ませてくれるし、また、このエリート交渉人と過去に不倫疑惑があって所轄に飛ばされた元交渉人研修生がからんでくるところなんかは、なかなかのスパイスになっていて引き込まれるよ。
んで、やがて「交渉」によって事件は解決……するのかしないのかどう転がっていくのかは、これはもう書けない。面白かった。

ところで、芦辺拓さんから新刊をちょうだいいたしました。

迷宮パノラマ館

迷宮パノラマ館

著者名がたとえ隠されていても芦辺作品と言い当てられそうな「世界」がカバーからもあふれ出している。なんとも楽しみな新刊です。ありがとうございます。例の長編書き下ろしも頑張りましょう!